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[Advanced Level] Listening & Reading Comprehension – Exercise 03

トランプ外交とアメリカ優位の終焉

世界におけるアメリカの役割縮小を明言するトランプ政権の下で1945年以降続いてきたパックス・アメリカーナが終わる

アメリカの歴史で、バラク・オバマとドナルド・トランプほど対照的な現大統領と次期大統領も珍しい。オバマは頭脳派で洗練されたりベラルな法律家。トランプは無作法なポピュリストで、リアリティー番組のスターだ。

 

だが選挙戦での発言を見る限り、トランプの外交政策は意外にもオバマの外交政策と似たものになる可能性がある。二人はいずれも、アメリカは世界の舞台から手を引くべきだと考えているのだ。

ただしオバマは、条約の締結など国際的な取り組みには敬意を払ってきた。トランプは違う。選挙戦で広げた大風呂敷のどこまでが本気かは分からないが、その半分でも実行に移せば、1945年から続いてきたパックス・アメリカーナ(アメリカによる平和)は終焉しかねない。

 

トランプが最優先していることの一つは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領との関係改善だ。大統領選勝利後、トランプはプーチンに「ロシアおよびロシアの人々と強力かつ永続的な関係を築くことを非常に楽しみにしている」と語った。

実はこれとほぼ同じことを、オバマも8年前の大統領就任時に言っている。それはジョージ・W・ブッシュ前大統領が進めて、道徳観を振りかざし、世界に自由と民主主義を広めることを目指す介入主義的な外交政策との決別を意味した。

 

オバマは当時の選挙戦で、どの国の指導者とも無条件で対話に応じると強調し、対立候補から「幼稚な発想」と批判を浴びた。だが大統領に就任すると、オバマはキューバの独裁者やミャンマー(ビルマ)の軍事政権と協議して国交正常化を実現し、イランと核合意を結んだ。その一方で、シリアのバシャル・アサド大統領に対する退陣要求は、口先だけで、そのための行動はほとんどとらなかった。

オバマは、重要なのはアメリカの価値観ではなく国益(オバマが考える国益だが)だとする現実主義的な外交を展開。独裁体制下のエジプトや、社会主義国家のラオスで演説したときも、自由と民主主義を訴えるどころか、アメリカの過去の行いを謝罪するかのような話をした。

 

2009年に、イランで大統領選の結果に抗議する「緑の革命」と呼ばれる大規模デモが起きたときも、オバマは民衆を支持しなかった。オバマ政権はイラン政府との関係樹立に必死で、民主化推進はその流れに水を差すと考えたのだ。

オバマの「冷血外交」で、理念や価値観が優先されたことは数えるほどしかない(長続きしたことは一度もない)。例えばリビアでは、ムアマル・カダフィの独裁体制打倒を助けたが、リーダーを失った国の再建に手を貸すことはなかった。

 

アラブの春では、エジプトの独裁者ホスニ・ムバラクの辞任を呼び掛けたが、その後民主的に選ばれた大統領が軍事クーデターで失脚したときは知らんぷり。現在のアブデル・ファタハ・アル・シシ大統領は、このクーデターの「主犯格」だ。

オバマ外交は人権問題を無視したわけではないが、人権が大きな柱でなかったことは間違いない。オバマ自身はアメリカを、世界の模範的存在どころか、外国に突然乗り込んでひどい結果をもたらす、重大な欠陥のある国だと考えている。

 

とはいえ、オバマはアメリカを憎んでいるわけではない。2009年の記者会見で、オバマはこう語っている。「私はこの国を非常に誇りに思っており、世界に提供する多くのものを持っていると考えている。その一方で、世界の国々の価値観も認めており、…集団として協力するには、アメリカを含めすべての当事者が一定の譲歩をしなければならないとも考えている」。つまりアメリカは不完全だが、各国と協調している限りは高潔だというのだ。

では、トランプはどうか。トランプのアメリカ観は、オバマよりも一段とゆがんでいる。

 

例えば2016年7月21日付のニューヨーク・タイムズ紙とのインタビューで、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領が市民の自由を大幅に制限していることを問われると、「世界がアメリカのひどい状態を見たら、何を言ってもあまり説得力がないだろう」と語った。

プーチンがジャーナリストを殺害させているという疑惑についても、「まあ、わが国も殺しはたくさんやっているから」と言う。かつての共和党ならこうした道徳的相対主義を強く非難したが、今ではトランプの影響でその非難も下火になっている。

 

オバマと同じく、トランプもアメリカには道徳的な使命などないと考え、外国でのいざこざに道を突っ込むことを疑問視している。また、外国の再建に関わりたがらず、民主的正統性を欠いたリーダーとでも喜んで協力すると明言している。

トランプは大統領選後のウオール・ストリート・ジャーナル紙のインタビューで、シリアの反政府勢力への支援に終止符を打ち、ロシアと組む計画に改めて言及した。イランやロシアとアサドが、戦争犯罪を犯していることなど気にする様子もない。

 

とはいえ、シリアに関しては、オバマも反政府勢力をわずかに援助するだけで、アサド体制を支持するイランとロシアの残虐行為を阻止する措置を何ら取ってこなかった。このためシリアの反政府勢力の中には、トランプのほうが少なくとも正直だと歓迎する声がある。


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「今でこそ(アメリカが)実はわれわれを支持していないと分かったが、昔は味方だとも思っていた。たとえ敵の言いなりになっていてもね」と、アレッポの反政府勢力のリーダーはニューヨーク・タイムズ紙に語っている。

 

一方、国際機構をめぐっては、トランプとオバマの世界観は大きく異なる。オバマは地球温暖化ガスの排出削減を目指すパリ協定をまとめ上げた。これに対してトランプは、地球温暖化は中国の作り話だとして、パリ協定からの離脱を訴えた。

オバマはイランと核合意を締結したが、トランプは「屈辱的な合意」で「わが国の恥」だとして、交渉をやり直すと言う。

 

オバマは自由貿易論者で、TPP(環太平洋経済連携協定)をまとめるのに尽力したが、トランプは保護貿易論者で、TPPから離脱し、NAFTA(北米自由貿易協定)を破棄し、関税率を引き揚げると公約した。

オバマはNATOを支持し、東ヨーロッパとバルト三国をロシアから守るため、この地域のNATO軍を増やした。トランプはNATOを「時代遅れ」と断じ、金を十分支払わない国(ドイツや日本)に米軍を駐留させて守ってやる必要などないと言う。

 

つまりオバマは国際規範や法治主義を重視するが、トランプは違う。外国を爆撃してその石油を奪うべきだったとか、テロ容疑者を拷問するといったことを平気で口走る(いずれも国際法では戦争犯罪だ)。

政治学者のウオルター・ラッセル・ミードは、オバマはジェファソン主義者で、トランプはジャクソン主義者だという。ジェファソン主義は、第三代大統領トマス・ジェファソンに由来し、アメリカは国内の民主主義を完成させ、「外国にモンスター退治に行くべきではない」と考える。

 

一方、ジャクソン主義は、ポピュリズムによって第七代大統領となったアンドリュー・ジャクソンに由来し、「アメリカは外国のいざこざに関わるべきではない」が、アメリカに無用な干渉をする国はたたきつぶせ、という考え方だ。

ジェファソン主義とジャクソン主義は違いも多いが、よほどのことがない限り、事実上の孤立主義(不干渉主義)を貫くべきだと考える点は一致する。

 

オバマは断固として中東からの撤退を勧めてきた。だが、イラクから米軍を完全に撤退させ、シリア内戦に積極的に関与しなかった結果、この地域にパワーの空白をつくり、そこにテロ組織ISIS(自称イスラム国)やイスラム原理主義組織ヒズボラが入り込んできた。

トランプは中東からの撤退継続を表明しているだけでなく、ヨーロッパと東アジアからも撤退したがっている。また、退ロ制裁を解除して、ロシアにシリアへの対応を「外注」しようとしている。つまり、トランプの外交政策は、オバマの「背後から指導する」外交を拒絶するのではなく、それをパワーアップさせる可能性が高い。

 

世界におけるアメリカの優位は、オバマが大統領だった八年間もどうにか続いた。だが、もしトランプが選挙戦で言ったとおりのことをしたら、四年後あるいは八年後もアメリカの優位が続いているかは分からない。

かねてから言われてきた「ポストアメリカの時代」は、予想より早く到来するかもしれない。「アメリカファース」を掲げた大統領の手によって。

 

SOURCE: Newsweek Japan Edition (週刊ニューズウィーク日本版)

NEW WORDS:

優位 (yuui): predominance, superiority

終焉 (shuuen): demise

縮小 (shukushou): reduction, curtailment

洗練 (senren): polish, refinement

無作法 (busahou): ill-mannered, rude

条約 (jouyaku): treaty, convention

締結 (teiketsu): conclusion, execution

取り組み (torikumi): effort, initiative

大風呂敷 (ooburoshiki): big talk

永続 (eizoku): permanence, continuance

築く (kizuku): to build, to construct

介入 (kainyuu): intervention

対立候補 (tairitsukouho): rival candidate

幼稚 (youchi): childish, immature

発想 (hassou): idea, conception

協議 (kyougi): conference, negotiation

退陣 (taijin): retreat, stepping down

価値観 (kachikan): sense of values

独裁 (dokusai): dictatorship, despotism

樹立 (juritsu): establish, create

推進 (suishin): propulsion, drive

水を差す (mizu o sasu): to hinder, to hamper

冷血 (reiketsu): cold-bloodedness

理念 (rinen): doctrine, ideology

打倒 (datou): overthrow, defeat

再建 (saiken): rebuilding, reconstruction

独裁者 (dokusaisha): dictator, despot

辞任 (jinin): resignation

失脚 (shikkyaku): losing one’s position

当事者 (toujisha): person concerned

譲歩 (jouho): compromise, conciliation

協調 (kyouchou): cooperation, coordination

高潔 (kouketsu): noble, high-minded

非難 (hinan): criticism, blame

疑問視 (gimonshi): doubting, questioning

明言 (meigen): declaration, statement

終止符を打つ (shuushifu o utsu): to put an end to

残虐 (zangyaku): cruel, brutal

機構 (kikou): mechanism, organization

地球温暖化 (chikyuuondanka): global warming

排出 (haishutsu): emission

作り話 (tsukuribanashi): fiction, made-up story

離脱 (ridatsu): withdrawal, breakaway

屈辱 (kutsujoku): disgrace, humiliation

合意 (goui): agreement, consent

破棄 (haki): annulment, cancellation

公約 (kouyaku): public promise

駐留 (chuuryuu): stationing, garrison

法治 (houchi): constitutional government

爆撃 (bakugeki): bombing (raid)

拷問 (goumon): torture

由来 (yurai): origin, source, reason

退治 (taiji): eradication, suppression

孤立 (koritsu): isolation, being alone

貫く (tsuranuku): to pierce, to penetrate

空白 (kuuhaku): blank space, vacuum

継続 (keizoku): continuation

背後 (haigo): back, rear

拒絶 (kyozetsu): refusal, rejection

到来 (tourai): arrival, coming


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