Advertisement

[Advanced Level] Listening & Reading Comprehension – Exercise 17

ハッカー天国の新時代

あらゆるものがネットにつながる世界で巧妙化するサイバー攻撃の被害はより致命的に

えっと、ツイッターがつながらないぞ。アマゾンで買い物もできない。この世の終わりだ──アメリカ各地をそんな悪夢が襲ったのは昨年10月21日のこと。筆者はそのしばらく前に、サイバー攻撃の脅威に関する非公開の会合に招かれ、アメリカを代表する大企業の経営者たちと席を並べていた。

 

サイバー攻撃は何の前触れもなくやってくる。防ぎようがなく、しかも激しくなる一方だ。IBMのバージニア・ロメッティCEOも、サイバー犯罪はグローバル企業にとって最大の脅威だと認めている。

自動運転者や人口知能(AI)、デジタル通貨、仮想現実、人間の耳以上の音声認識──テクノロジーの驚異的な進歩が世界を変えつつある。あらゆるものにコンピューターが埋め込まれ、通信ネットワークに接続され、人と場所とメモがつながった巨大空間が出現している。

 

おかげでわたしたちの暮らしはより快適かつ安全に、そして豊かになるだろう。しかしテクノロジーにモラルはない。悪意のある人に乗っ取られたら大変だ。ネットに接続された最新式トイレハッキングされたら、水が逆流してくるかもしれない。

しかもハッキングは儲かる。破壊力が強ければ強いほど儲かる。そしてハッキングを完璧に防ぐ方法はない。みんな必死で研究しているが、絶対に侵入不可能な防護ソフトなど、この世に存在しない。

 

今のサイバー犯罪は勢いのある成長産業だ。注文に応じてハッキングのサービスを提供するビジネスもある。クレジットカードで料金を払って希望を伝えれば、あとは特殊なハッキングツールを設計し、お望みの標的を攻撃して顧客の恨みを晴らしてくれるという。

10月21日の大規模攻撃で狙われたのは、DNS(ドメインと名システム)大手プロバイダーのダイン。ハッカーが利用したのは「Mirai]という名のマルウエアだ。ネットに接続されたテレビやウェブカメラなど、セキュリティーの弱い無数のデバイスを遠隔操作で操り、ダインのサーバーを集中攻撃してアクセス不能に追い込んだ。結果、ダインのサーバーを利用している多くのウェブサイトが使えなくなった。

 

攻撃は午前7時10分に始まり、米東海岸の大半でペイパルやアマゾン、ニューヨーク・タイムズ、ツイッター、ネットフリックス、スポティファイなどのシステムが止った。さらに第二、第三の攻撃が続き、これらのサイトの大部分は午後遅くまで使えない状態になった。

その日の朝、筆者は友人に借りた金を返すためにペイパルにアクセスしようとしたが、空白のページが表示され、何かがおかしいと気付いた。ツイッターを開こうとしても、やはり何も表示されない。音楽でも聴こうと思ってスポティファイをクリックしたが、画面はフリーズし、クラウドサーバーから遮断された。こうして筆者は、自分がいかにネットに依存しているかを思い知らされた。

 

ダインへの攻撃で被害を受けた企業は莫大な損失を被ったに違いない。正確な数字は不明だが、イギリスの保険会社ロイズはサイバー攻撃が企業に与える被害額を年間4000億ドルと見積もっている。ちなみにこの数字には、顧客の信頼を失うことによる損失や、ハッカーから自社システムを守るための対策費は含まれていない。

ハッカーにとっては、こうした攻撃だけがサイバー犯罪活動ではない。14年にはヤフーが攻撃され、ユーザー5億人の氏名やパスワード、生年月日、その他の情報が盗まれる事件も起きた。個人情報を詐欺グループに売るのが目的だったと思われる。クレジットカード番号を盗むために大企業のシステムが狙われる事件も起きている。

 

北朝鮮やロシア、中国では、政府が自らハッキングに手を染めているようだ。昨年の米大統領選でヒラリー・クリントン陣営のコンピューターに侵入したハッカーも、ロシア政府系だったとされている。

ウィルス対策ソフトのマカフィーによれば、このところDNSへの攻撃が増えているのはインターネット全体を一気にシャットダウンする方法を探るため、外国のハッカー部隊がアメリカのインターネットの弱点をひそかに探っているからだ。

 

「彼らは今回の攻撃を分析し、さらに本格的な攻撃を仕掛けてくる」と、彼は本誌の取材に語っている。「とんでもない事態を覚悟しておくべきだ」。

最近の傾向で最も目立つのはランサムウェアによる攻撃の増加だ。ハッカーは企業などのシステムに侵入し、その膨大な量のデータファイルを勝手にロックして「人質」に取り、「身代金」を払わなければデータを破壊すると脅迫する。FBIは、昨年だけで10億ドル以上の身代金が奪われると予測した。

 

データの「誘拐」だけではない。インターネットにつながる装置や機械が増えるほど、ランサムウェアの危険は増す。

冒頭に述べた会合の際、大手レンタカー企業の幹部に対し、ある出席者がこう指摘した。あと5、6年もすればレンタカーの車両はすべてインターネットに接続されるだろうが、そうなれば全車両がハッカーに乗っ取られる可能性がある。高速道路を走行中の車も多いだろう。車を衝突させると脅かされたら、身代金を払うしかあるまい。

 

現にジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、同社のインスリンポンプ(体に装着してインスリンを注入する携帯型機器)がハッキングされる可能性を認めている。またセント・ジュード・メディカル社のペースメーカーも脆弱だと指摘されている。

悪意のあるハッカーがかれらの機器に時限爆弾のようなソフトウェアを送り込めばどうなるか。患者たちを殺すと脅かして、金を要求するかもしれない。


Advertisement

 

もっと恐ろしいのは、AIがわたしたちに成り済ますことだ。AIボットはあなたの電子メールにもカレンダーにも、検索履歴にもフェイスブックにも音楽サービスにも入り込む。あなたについて十分に学び、あなたに成り切る。そして上司や母親にメールを送りつけたり、チャットを始めたりするかもしれない。

今までも、成り済まし犯罪はあった。だが、AIによる成り済ましはもっと恐ろしい。人格そのものが盗まれてしまうからだ。クレジットカードの番号とは訳が違う。人間関係を破壊されたら、わたしたちの受ける精神的な打撃は計り知れない。

 

結婚生活を壊されたくなければ金を払えと脅迫されるかもしれない。あるいは誰かに成り済まして、もっと大きなターゲットを狙うかもしれない。

鎖の中の最も弱い輪は人間だということは明白な理だ。コンピューターの周りにバリアーを張り巡らしても、ハッカーが誰かをだましてパスワードや認証コードを聞き出せば、開いたドアから楽々と入り込める。例えば、こんな調子だ。「ハイ、メアリー。昨夜は女子総合格闘技の試合に一緒に行けて楽しかったね!だけど飲みすぎて、いろんなことを忘れちゃった。核ミサイル発射の認証コードも。教えてくれる?」

 

これが現実になったら、全米の送電網がシャットダウンされるどころの騒ぎではなくなる。

もちろん、それで世界が破滅するわけではあるまい。原爆が発明されても人類の文明はまだ滅びていない。各国政府や企業は年間1500億ドルも投じてセキュリティーの強化とハッキングの予防に努めている。

IBMやマイクロソフトなどの大企業は、ダークトレースやジャンクスなどの新興企業も、侵入防止の新しい方法を模索している。AIにシステムの正常な状態を学習させ、少しでも異変を見つけたら直ちにシャットダウンさせる仕組みも考案させている。データを一ヵ所に集めず分散管理する方法もある。

 

今でも大企業や政府のシステムは一日に何百万回というハッキング攻撃を受けている。それでも大半は阻止され、あるいは限定的な被害で済んでいる。サイバー防衛の努力のたまものだ。

それでもハッカーたちは防衛の先を行く。昨年のダインの例で分かるように、彼らは最も脆弱な部分を見つけ出す。

データセンターをどんなに厳重に防御しても、彼らはネットにつながった無数の(そしてセキュリティーの脆弱な)デバイスを乗っ取って、物量作戦で攻撃をかけてくる。

警告。間違ってもトイレはネットにつながらないこと。

 

SOURCE: Newsweek日本版

NEW WORDS:

天国 (tengoku): paradise, heaven

巧妙 (koumyou): ingenious, skillful

致命的 (chimeiteki): fatal, lethal

悪夢 (akumu): nightmare, bad dream

襲う (osou): to attack, to assail

筆者 (hissha): author, writer

脅威 (kyoui): threat, menace

非公開 (hikoukai): private, secret

前触れ (maebure): advance warining, previous notice

通貨 (tsuuka): currency

仮想現実 (kasougenjitsu): virtual reality

認識 (ninshiki): recognition, awareness, perception

驚異 (kyoui): wonder, miracle

埋め込む (umekomu): to bury, to embed

接続 (setsuzoku): connection, attachment

空間 (kuukan): space, room

悪意 (akui): ill will, evil intention

乗っ取る (nottoru): to take over, to capture, to seize

逆流 (gyakuryuu): counter-current, adverse tide

儲かる (moukaru): to be profitable, to yield a profit

破壊力 (hakairyoku): destructive power, destructive force

完璧 (kanpeki): complete, flawless

侵入 (shinnyuu): invasion, incursion, raid

防護 (bougo): protection

提供 (teikyou): offer, providing, supplying

特殊 (tokushu): special, peculiar, unique

標的 (hyouteki): target

顧客 (kokyaku): customer, client

恨み (urami): resentment, grudge

晴らす (harasu): to clear away, to refresh

遠隔 (enkaku): distant, remote

操る (ayatsuru): to operate, to control, to maneuver

不能 (funou): impossible, incapable (of doing)

空白 (kuuhaku): blank space, vacuum

表示 (hyouji): indication, showing

遮断 (shadan): isolation, cut off

依存 (izon): dependence, reliance

損失 (sonshitsu): loss (of assets, profit)

不明 (fumei): unclear, uncertain

保険 (hoken): insurance, guarantee

見積もる (mitsumoru): to estimate

対策 (taisaku): measure, step

氏名 (shimei): full name, identity

詐欺 (sagi): fraud, cheating, scam

陣営 (jin’ei): camp, faction (of political party)

部隊 (butai): force, unit

本格的 (honkakuteki): genuine, real

取材 (shuzai): collecting data (for an article)

目立つ (medatsu): to stand out

膨大 (boudai): huge, vast, enormous

勝手に (katte ni): as one pleases

人質 (hitojichi): hostage

身代金 (minoshirokin): ransom

破壊 (hakai): destruction, disruption

脅迫 (kyouhaku): threat, menace

誘拐 (yuukai): abduction, kidnapping

冒頭 (boutou): beginning, start

幹部 (kanbu): executive staff

指摘 (shiteki): pointing out

車両 (sharyou): railroad cars

走行 (soukou): running a wheeled vehicle

脅かす (odokasu): to threaten, to menace

装着 (souchaku): equipping, installing

注入 (chuunyuu): pouring, injection

脆弱 (zeijaku): weak, fragile

時限爆弾 (jigenbakudan): time bomb

成り済ます (narisumasu): to pose at, to impersonate

検索 (kensaku): looking up, searching for

履歴 (rireki): personal history, background

上司 (joushi): superior, boss

人格 (jinkaku): personality, character

計り知れない (hakarishirenai): unfathomable, inestimable

明白 (meihaku): obvious, clear

張り巡らす (harimegurasu): to stretch around

認証 (ninshou): authentication, confirmation

楽々 (rakuraku): comfortably, easily

総合 (sougou): synthesis, coordination

格闘技 (kakutougi): combat sport

発射 (hassha): firing, shooting

送電網 (soudenmou): electricity supply network

破滅 (hametsu): ruin, destruction, fall

原爆 (genbaku): atomic bomb

滅びる (horobiru): to go to ruin, to be destroyed

強化 (kyouka): strengthening, itensifying

新興 (shinkou): rising, developing

模索 (mosaku): groping for, exploring for a solution

正常 (seijou): normality

異変 (ihen): unusual phenomenon

仕組み (shikumi): structure, construction

考案 (kouan): plan, idea

分散 (bunsan): dispersion, scattering

阻止 (soshi): obstruction, prevention

限定的 (genteiteki): limited, limiting

防衛 (bouei): defense, protection

厳重 (genjuu): strict, severe

防御 (bougyo): safeguard, protection

物量 (butsuryou): amount of material resources

作戦 (sakusen): tactics, strategy


Advertisement


If you find any error in this post please don't hesitate to contact me.

JapanesePod101.com - The Fastest Way to Learn Japanese Guaranteed

[Advanced Level] Listening & Reading Comprehension – Exercise 18
[Advanced Level] Listening & Reading Comprehension – Exercise 16
0 Shares
Share
Pin
Tweet
Share