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[Advanced Level] Listening & Reading Comprehension – Exercise 11

ジャック・マーの大逆転人生

創業20年目にして時価総額55兆円の巨大グループをつくり上げた男。

その男は、悲しきハンディキャップを背負ったがゆえのいじめ、流血騒ぎ、高校受験失敗、就職難など数多の壮絶な試練をくぐり抜けてきた。

これは、小さな巨人の大逆転の記録である。

 

ブラックスーツに身を包んだ職員に囲まれ、ヨレたジャージにスラックスという出で立ちの小男が、早稲田大学の校舎から歩いてきた。短めに刈った髪と、くしゃっとした笑顔が、遠目には子供のようだ。熱狂する人々が殺到する中、「黒服」にしっかりとガードされた彼は、スマートフォンのカメラを向ける一人ひとりに、笑顔で応えながら小さく手を振っていた。

彼こそが、時価総額55兆円。世界8位に君臨するIT帝国「アリババ」のトップ、ジャック・マーその人だ。

 

2014年9月、ジャック・マー率いるアリババがニューヨーク証券取引所に上場を果たし、2017年10月には、一時、時価総額4700億ドル、当時のレートで53兆円という数字を叩き出した。これは、ECの雄Amazonを超える数字だ。

2015年3月期のグループ全体の売上品は762億元。3年後の2018年3月期には、同じく2502億元となっている。実にここ3年間で、3倍以上の成長を遂げている。アリババが世界で注目を集めるのは、これほどの規模で、これだけの急成長を遂げたことにある。

 

ソフトバンク会長兼社長の孫正義氏から約20億円を渡されたとき、ITバブルに沸く中国にありながら、マー氏の会社は全く利益を上げていなかった。それから18年、マー氏の総資産は、孫氏のそれをゆえに超えている。

しかし、ジャック・マーという人物が、世界中の注目を集めるのは、アリババの創業者であることだけでなく、その人生が、多くの人に夢を与えたことにある。特に、「見た目の冴えない」人にとって、マー氏は憧れの的となっているという。

 

マー氏の生い立ちは、決して恵まれたものではなかった。1964年に、上海に近い杭州市で生まれたマー氏は、幼い頃を文化大革命(66~76年)の渦中で過ごした。祖父は、反革命分子と見なされており、路上で懲罰を受けることもしばしば。それが原因で、マー氏自身もいじめを経験している。

チビで不細工、ナイーブで自尊心が高かったというマー氏は、格好のいじめの対象だったそうだ。時には授業中に流血騒ぎを起こし、時には十数針を縫う大怪我をした。しかし、マー氏は、決してやられっぱなしにはならなかったと振り返る。「私はチビだったけど、喧嘩は得意だったよ」とマー氏。実際、やられたらやり返し、自ら折れることは絶対にしない。生傷の絶えない学校生活に、両親も愛想を尽かしていたそうだ。

 

喧嘩に明け暮れる荒んだ日々を送るマー氏は、当然というべきか、勉強で才能を発揮することもなかった。特に数字は壊滅的な有り様で、高校受験に失敗し、3流というのもはばかられるレベルの学校に通うことになった。「起業家には落ちこぼれが向いています。頭のいい人は、いい会社に入り、そこそこの仕事をする。でも、私のような落第生は、どこにも入れないので、自分でやるしかなかったわけです」

あるとき、仕事のなかったマー氏は、いとことともに、ホテルマンのアルバイトの面接を受けたそうだ。容姿端麗で背の高かったいとこは、ホテルマンの職を得たが、マー氏は「チビで不細工はホテルマンには向かない」との理由で不採用に。「自分は不細工だが、世界を変えた。人生に困難が待ち構えているからこそ、努力を重ね、大人物になったのだ」

 

勉強の苦手なマー氏だったが、小さな馬雲(本命:マー・ユン)を世界のジャック・マーにしたのは、意外にも幼い頃から取り組んでいたある学びだった。「勉強は嫌いだったが、唯一、英語だけは大得意。ただ、学んだのは学校ではなく、杭州にある西湖のほとり。そこに行けば外国人観光客がたくさんいたから、観光案内をしていたんだ」と中学時代のことをマー氏は教えてくれた。「日本の英語検定試験のようなものを受けても、私は合格しないでしょうね」と語るマー氏だが、その英語には淀みがない。

 

のちに、マー氏は杭州師範学院の英語科を卒業し、卒業生で唯一、大学講師としての職を得た。同時に、夜間の英語講座を開講し、多くの人に英語を教えてきたという。その甲斐あって、杭州では名の知られた英語教師となったマー氏は、中国政府からアメリカでの仕事を依頼される。マー氏は、そこでインターネットと出会ったそうだ。「カナダ人の友人の家で、初めてインターネットに触れて、”chinese”と検索したが、何も出てこなかった。このとき確信したよ。自分のやるべきことはこれだって」。帰国後すぐに、「中国黄百」を立ち上げたマー氏。それが1999年、アリババ誕生の瞬間だった。

 

アリババの急成長の裏には何があるのか。TS・チャイナ・リサーチ代表で、中国に詳しい経済アナリストの田代氏にうかがった。

田代氏は力強くこう言い放つ。「日本と中国ではお金に対する考え方が全く違う!日本人は、お金の話をしたがらないところがありますが、中国では、親族や友人同士の会話で、「いくら儲けた」「あれは儲かる」という話が大好きです。アリババを理解するには、中国人の国民性や政治・文化の特徴を知る必要があります」。田代氏によれば、「お金を少しもムダにしたくない」という中国人の心をアリババはガッチリと掴んだのだという。


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アリババの展開するBとCショッピングモール「天猫(Tモール)は、今や、中国のAmazonと呼べる地位を確立している。また、CとCでは、同グループの「タオバオ」が市場を独占し、アメリカ最大手のオークションサイト「eBay」を退けた過去もある。

自身も「天猫ユーザー」と語る田代氏は、次のように分析する。

「天猫最大の特徴は、購入した商品が気に入らなければ返品できる点です。日本なら、よほどのことがなければ、返品する人は少ないですが、お金に対する感度の高い中国人は、少しでも気に入らないと返品・交換を要求します。このシステムによって、アリババのサービスは唯一無二の地位を築いたのです」。

 

マー氏も、中国進出を狙うeBayとの競争の中で、「eBayが海を泳ぐサメだとすると、私たちは揚子江にいるワニです。海で遭えば、負けるでしょう。ですが、川ならば、私たちの勝ちです」と語っている。つまり、中国という国を正確に理解し、その欲求に独自の答えを出したことが、アリババ躍進の原動力となったわけだ。

「アリババは、もはやインフラです。ECのなかった中国に、その文化を根付かせ、さらに、独自もモバイル決済サービス「Alipay」によって、アリババの運営するECサイト内の決済の仕組みを整えました」。

 

「Alipay」は、2004年にサービスを開始したが、その利用者は2017年時点で、実は5億人を突破。中国国内はもちろん、周辺のアジア諸国、さらにはヨーロッパにも広がりを見せている。そのモバイル決済サービスが持つ仕組みこそが、アリババを頂点に押し上げたのだと田代氏は話す。

一企業が巨大な決済サービスを展開するには、大きな障壁がありそうだが、「中国の柔軟性が発揮された」と田代氏。「中国では、まずやってみて、うまくいったら、それに合わせて国の制度を変えるという特徴があります。日本では、待ったをかけられそうなサービスでも、みんなが使い、経済的発展に寄与しているならと黙認され、ある一定の段階で、公に承認されます」。

 

実際に、Alipayの普及が進んだ頃、アリババは、しばらく無許可で銀行業務の認可を得て自前の株式制商業銀行で、ネット銀行である「網商銀行」を設立させている。野放しに成長させ、有用と見ればお墨付きを与えるというのが中国流のやり方だ。

中国におけるECを支配したアリババだが、次の動きもすでに始まっている。「投資企業として大きな動きをしています。自動物流、AI研究など多くの先進テクノロジーに投資しています。国内の決済サービスを握っているので、どんなサービスが当たろうが、その本流から外れることはないので、強気になれるのでしょう」と田代氏。

 

SOURCE: PRESIDENT (プレジデント)

NEW WORDS:

逆転 (gyakuten): (sudden): change, turn around

時価 (jika): current value

総額 (sougaku): sum total, total amount

流血 (ryuuketsu): bloodshed

壮絶 (souzetsu): grand, fierce

試練 (shiren): test, trial, ordeal

遠目 (toome): looking from a distance

熱狂 (nekkyou): wild enthusiasm

殺到 (sattou): rush, flood

君臨 (kunrin): reigning, controlling

帝国 (teikoku): empire

率いる (hikiiru): to lead, to command

証券取引所 (shoukentorihikijo): stock exchange

上場 (joujou): listing (on the stock exchange)

遂げる (togeru): to accomplish, to achieve

冴える (saeru): to be clear (of a sight)

憧れ (akogare): yearning, longing

的 (mato): mark, target

渦中 (kachuu): vortex, whirlpool

懲罰 (choubatsu): discipline, punishment

不細工 (busaiku): clumsy, ugly, unattractive

自尊心 (jisonshin): self-esteem, self-respect

振り返る (furikaeru): to reflect on

生傷 (namakizu): fresh wound

荒む (susamu): to grow wild

壊滅的 (kaimetsuteki): devastating, catastrophic

有り様 (arisama): state, condition

起業家 (kigyouka): entrepreneur

落第 (rakudai): failure (in an examination)

容姿端麗 (youshitanrei): attractive face and figure

不採用 (fusaiyou): rejection (of an application)

待ち構える (machikamaeru): to lie in wait

検定 (kentei): official certification

淀み (yodomi): faltering, hesitation

講師 (koushi): lecturer

講座 (kouza): course (of lectures)

開講 (kaikou): holding a course (of lectures)

儲ける (moukeru): to earn, to profit

確立 (kakuritsu): establishment

独占 (dokusen): monopoly, monopolization

購入 (kounyuu): purchase, buy

返品 (henpin): returning purchased goods

感度 (kando): sensitivity

唯一無二 (yuiitsumuni): one and only, unique

築く (kizuku): to build, to construct

進出 (shinshutsu): advance, launching, expanding

欲求 (yokkyuu): desire, want

躍進 (yakushin): making rapid progress

原動力 (gendouryoku): driving force

根付く (nezuku): to take root

決済 (kessai): payment of an account

運営 (unei): management, administration

仕組み (shikumi): structure, construction

整える (totonoeru): to put in order

突破 (toppa): breaking through

障壁 (shouheki): obstacle, barrier

柔軟性 (juunansei): flexibility

寄与 (kiyo): contribution, service

待った (matta): false start of a bout

黙認 (mokunin): tacit consent

公 (ooyake): public, common

無許可 (mukyoka): unauthorized, without permission

認可 (ninka): apprival, license

自前 (jimae): going into business for oneself

設立 (setsuritsu): establishment, founding

野放し (nobanashi): letting someone do as they please

有用 (yuuyou): useful, helpful

お墨付き (osumitsuki): authorization, certificate

物流 (butsuryuu): distribution of goods

先進 (senshin): advance, leadership

本流 (honryuu): main course (of river)

強気 (tsuyoki): confident, self-assured


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