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[Advanced Level] Listening & Reading Comprehension – Exercise 01

大学授業料後払いの効用

高等教育の無償化が議論されている。その中で、自民党の教育再生実行本部が、授業料の後払い制度の提案を行った。大学などの授業料をいったんは国が代納したうえで、卒業後に学生が収入に応じて返済する仕組みである。所得を詳細に捕捉するマイナンバー制度を前提に案出された。もちろん、家計所得に応じて給付制の奨学金を組み合わせてもよい。自民党案はオーストラリアの制度を参考にしているが、英国でもすでに同様の制度が実施されている。

 

議論の流れを見ると、授業料無償化の対案として出てきた印象が強い。だが、無償化と後払い製を混同して論じてはならない。後者は、高等教育を日本社会にどのように位置づけ直すかという点で、根本的な原理原則の変更を含んでいるからである。

 

問題を整理するために、授業料を個人への投資と見ると、授業料完全無償化は、国家(税金)による個人への投資である。税による再分配だが、この場合、大学などに進学できない低所得の家計から、高所得の家計への再分配という不平等が生じる。他方、現行制度のように家計が負担する場合、授業料は親から子への投資=財産分与と見なせる。それが、所得によって高等教育の機会を制約していることは周知のとおりだ。

 

これらに対し、授業料後払い制は、学生本人が自分に投資し、投資に見合った将来の報酬から、国が代納した分を返済する。つまり、この制度は、家計所得によらずにすべての学生が学費の自己負担をすること、将来の所得を通じて負担分を返済することを前提とする、教育の受け手と費用の負担者、投資先を一致させる試みである。学生がいわば自腹で教育を受けることを全員に徹底させる仕組みへの転換といってもよい。

 

この変更は、高等教育のアカウンタビリティー(費用に見合った教育の提供という責任)の宛先を、保護者から学生に変える。自分が払う費用で教育を受けるという意識を学生が持つことで、それに見合った教育を受けているかという判断も、保護者ではなく学生本人に委ねられる。


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どこで何を学ぶか、高等教育の機会をどのように生かしているか(どのように学んでいるか)の選択も、他人任せではなくなる。すべての学生が自分の費用で自分に投資するという意識を強めることで、教育についての意識が変わる可能性があるのだ。卒業と同時に多額の借金を全員が負うことを心配する向きもあるが、そのコスト意識が教育や学習への厳しいまなざしの源泉になりうる。

 

問題もある。この制度は卒業生が働き続けることや収入の安定を前提とする。非正規雇用の増加や賃上げの停滞、結婚や出産による女性の一時退職や復帰後の非正規労働者化などは、返済の中断や困難さを生む。現在の貸与型奨学金でも同様の問題が生じているが、全員の授業料を後払いとすれば、返済困難を軽減ないし減免する救済措置は国の大きな負担となる。問題を回避するためには、男女の働き方改革や雇用改革を一緒に進めなければならない。授業料負担の仕組みを変えるだけではうまくいかない仕組みなのである。

 

SOURCE:  Weekly Toyo Keizai Magazine (週刊東洋経済)

NEW WORDS:

効用 (kouyou): effect, benefit

高等教育 (koutoukyouiku): higher education

無償化 (mushouka): making something free of charge

後払い (atobarai): deferred payment

代納 (dainou): payment for another, paying with a substitute

返済 (hensai): repayment, reimbursement

仕組み (shikumi): structure, arrangement

所得 (shotoku): income, earnings

捕捉 (hosoku): capture, understanding

案出 (anshutsu): to invent, to think out

混同 (kondou): confusion, mixing

根本的 (konponteki): fundamental, basic

再分配 (saibunpai): redistribution

分与 (bun’yo): allocation

制約 (seiyaku): limitation, restriction

周知 (shuuchi): common knowledge

報酬 (houshuu): remuneration, reward

試み (kokoromi): trial, experiment

自腹 (jibara): paying one’s own way

転換 (tenkan): conversion, switchover

宛先 (atesaki): address, destination

委ねる (yudaneru): to entrust, to leave to

眼差し (manazashi): look, gaze

源泉 (gensen): source, origin

非正規雇用 (hiseikikoyou): irregular employment

賃上げ (chin’age): wage increase

停滞 (teitai): stagnation, delay

出産 (shussan): childbirth, giving birth

復帰 (fukki): return, comeback

中断 (chuudan): interruption, suspension

軽減 (keigen): abatement, reduction

減免 (genmen): reduction and exemption

救済 (kyuusai): relief, aid, rescue

回避 (kaihi): evasion, avoidance

改革 (kaikaku): reform, reformation


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